初めてフィルムカメラに触れる若い世代が映画やインターネットや学校の授業でしかみたことがないあの謎の機械で、どうやって写真が撮れるのかわからない、あるいは大雑把なことは知っているけど、細かいことを調べても専門的すぎてわからないというのはよくあることです。フィルム世代にとっては息をするようにフィルムを巻き上げる行為ですら、初めて触れる人にとってはそれが何を意味しているのかわからないことがあります。
写真フィルムって何?
感光剤が塗布されたフィルムで、普通はパトローネという金属の筒に入っています。
これをカメラに装填して、シャッターを切ることで、一瞬光をあてて感光させます。撮影したフィルムは現像処理を行うことで、プリント可能な状態になります。
フィルムには現在入手が容易なものとして、35mmフィルムと中判フィルムの2種類のサイズがあります。もっとも広く使われているのは35mmフィルムです。また、そのフィルムにも、カラーネガフィルム、モノクロネガフィルム、ポジフィルムなどの種類があります。
フィルムカメラって何?
写真フィルムを装填して撮影することができるカメラのことです。
一眼レフにかぎらず、レンジファインダーや二眼レフ、コンパクトカメラなど多用なカメラがあります。現在入手が容易で比較的状態が良いものはマニュアル一眼レフで、巻き上げモーターやオートフォーカス、露出計など電子部品を含んだフィルムカメラは電池が入手不能だったり、壊れていることがあります。
マニュアルカメラって何?
現代のカメラは露出設定やフォーカスだけでなく手ブレまで補正してくれますが、昔のマニュアルカメラはすべてを撮影者が任意に設定する必要があります。
基本的な写真の知識が必要になりますが、一度理解すればどのマニュアルカメラでも操作することができますし、意図した効果を期待した撮影が可能になります。マニュアルに慣れると、一般的なデジタル一眼レフの絞り優先すらめんどくさく感じるようになります。
マニュアルといっても、操作するのはシャッター速度、絞り、フォーカスの3つで、やり方さえ覚えてしまえば簡単です。
フィルムカメラはどうやって写真が撮れるの?
写真フィルムは感光剤が薄く塗られていて、これをカメラに装填し、シャッターを切ると、レンズからの光(映像)がフィルムの感光剤に焼き付きます。その上で適切な現像処理により、フィルムに映像を固着させます。これだけでは何が撮影されているかをみることが困難ですので、このフィルムから更に印画紙へ焼き付けたり、デジタルスキャンしてプリントしたりパソコンに取り込むことで鑑賞することができます。
スマホを取り出してスワイプしてカメラアイコンをタップしてシャッターを切るだけでクラウドサービスにアップロードされるようなスピード感はありません。途轍もなく手間がかかり、お金もかかります。
フィルムを巻き上げるって何?
写真フィルムは細長いロール状になっており、その一部分に写真を撮影するのですが、原則として一度撮影した箇所に更に写真を撮ることはできません(例外として、多重露光という特殊な撮影方法もあります)。そのため、一度シャッターを切ると、連続して次のシャッターを切ることはできません。シャッターを切って撮影したら、次の撮影のためにフィルムを巻き上げるという作業が必要になります。
LeicaM3以降のカメラには大体巻き上げレバーがついており、これを半回転ほどさせます。古いカメラなどではダイヤル状の巻き上げツマミがあり、これを親指でグリグリ回転させて巻き上げます。Leica M3の初期ロットは二回巻き上げになります。
フィルムは途中で交換できるの?
フィルムを知らない世代が抱く疑問のひとつに、一度装填したフィルムは途中で交換できるのかというものがあります。
これはできません。一度装填したフィルムは、最後まで撮影するか、途中で残りの部分を放棄して巻き戻さない限り交換することはできません。暗室があれば、頑張れば交換できるかもしれませんが、そういう状況は稀です。
では何らかの不慮の事故で、撮影途中のフィルムを取り出せなくなってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。
方法は様々ですが、例えばすでに枚数分撮りきっているのに更に無理に巻き上げようとした場合、安いカメラであればフィルムが千切れ、Nikon Fなどではカメラの巻き上げギアが折れます。高級なカメラは自分が壊れてもフィルムを守るんですね。巻き上げギアが折れた場合は、巻き戻しはできますから、そのまま巻き戻してフィルムを取り出し、カメラを修理に出します。逆にフィルムが千切れてしまった場合は、お近くの現像所やラボに持ち込んで、摘出を依頼します。
フィルムはどうやって写真にするの?
写真フィルムはそれだけでは写真になりませんから、DPEという現像所に出します。イオンなどの店内に入っているキタムラカメラや、大型店舗を構えるコイデカメラなど、まだDPEはたくさんありますが、もしお近くに現像所がなければ、ネットでフィルム郵送サービスをやっているところを利用することもできます。
お店に注文するとき、ほとんどの場合は同時プリントを依頼します。一緒に写真をL判用紙に印刷してくれます。
フィルム写真はパソコンやスマホに保存できるの?
現像してプリントしてもらっても、フィルム写真はデータにならないのでパソコンやスマホに保存することはできません。
フィルムそのものをスキャンするためのスキャナを使うか、DPEでCDに焼いてもらいます。最近はスマホでプリントした写真を取り込むガジェットもあります。大量のフィルムをスキャンするドラムスキャナというものもありますが、業務用ですので個人で所有できるほど安くはありません。
フィルム専用のスキャナは高品質な取り込みができますが、フラットベッド同様スキャン速度が遅く、36枚のスキャンにもかなり時間がかかります。
もっと簡単に撮れないの?
フィルムっぽい写真をもっと簡単に撮影するには、チェキが一番楽です。
チェキはインスタントカメラの一種なので、フィルムカメラではありません。ただし一枚ずつしか撮影できず、コピーすることが困難で、フィルムに近いソフトな映像を撮影することができます。サイズが少し小さいですが、ワイド版もあります。
本格的でないコンパクトカメラなどであれば、あまり露出の設定を気にすることなく、もう少し簡単に撮影できますが、結局は現像に出すなどの手間暇が必要になります。
フィルムカメラの醍醐味はこうした手間がかかることでもあるので、手間を惜しんでは楽しさも半減します。
フィルム写真の何が魅力なの?
フィルム写真に理論的に箇条書きできるような魅力はありませんが、アナログな「写真」という部分で完結できる趣味だといいかえることができます。つまり、電子部品のない機械式カメラで撮影したフィルムを、昔ながらの印画紙に焼き付ける工程には、どこにも現代のデジタル技術が介在しません。ただし、現在はどこのDPEでもデジタルプリントになっていますから、印画紙に焼きたい場合は、どこか専門の写真ラボにお願いする必要があります。しかし可能性の話は別です。ある日、太陽フレアが大気圏で深刻な電磁波を撒き散らし、世界中の電子機器が使えなくなったとしても、我々が撮影したフィルムは印画紙に焼き付けることができるのです。
フィルム写真のノスタルジックな発色、柔らかな輪郭、間違った露出で撮られた夢のような映像は、どういうわけかより鮮やかに高精細になったデジタル画像よりもずっと魅力的に感じます。これは主観的なものです。フィルムを使い続けている人のほとんどが、言葉で説明し難い魅力を感じていて、かつてはデジタルでフィルムをエミュレートしようと試みて、多くは失敗するか、あるいはそれが偽物であることに気づいて、フィルムで撮り続けることを選びます。
ネガフィルムとポジフィルムの違いは?
ポジフィルム(リバーサルフィルム)とネガフィルムというものが、最初の頃はよくわからなくて不安に感じるものです。
ポジフィルムもネガフィルムも見た目は同じで、同じカメラで同じように撮影することができます。現像したときに、ポジフィルムはフィルム自体に鮮やかな色が再現され、それ自体が鑑賞の対象にもなります。ネガフィルムはすべての色が反転していますから、フィルム自体を見ても何が写っているか確かめることは困難です。ネガフィルムはプリントやデジタルスキャンで色を反転させる必要があります。
お店で多く売られているフィルムはこのネガフィルムです。DPEで現像しやすく、ラティテュードが広く、大雑把な露出を許容します。他方、ポジフィルムはラボに持ち込まないと現像できないことが多く、仕上がるまで一週間以上かかり、ラティテュードが狭く、正確な露出設定が求められます。
モノクロフィルムってなに?
モノクロフィルムは白黒のフィルムで、光の強さだけを記録します。デジタルカメラでモノクロフィルム同様の撮影ができるセンサーを備えたものはほとんどありません
多くはカラー映像の彩度を落とすか、アルファチャネルを合成してモノクロ画像を作り出だすカラー画像の出来損ないです。
モノクロフィルムはカラーフィルムとは現像方法が異なりますから、DPEに出すと工場送りになり、仕上がりまで時間がかかります。写真を始めたての人は、モノクロフィルムにあまり魅力を感じないかもしれませんが、自家現像できたり、カラーフィルムでは撮ることが難しい場面での撮影を可能にします。