モノクロフィルムの自家現像・手順編

モノクロフィルムの現像にはかなりの時間がかかります。キッチンを占有してしまいますから、もし現像を行うのであれば、深夜にやるのが良いでしょう。

道具編で上げた薬剤と道具を用意してください。そこに書かれた以外には、夏場であれば凍ったペットボトルを3本用意してください。冬場であれば給湯器のお湯で温度調整ができます。

また、タブレットをお持ちの方は、現像時にはこのページを開いて確認しながら作業できるように、毎回作業する方にとって不要な情報はなるべく少なくしてあります。画像もありません。

 

1.フィルムをリールに巻く

ダークバッグの中でフィルムをリールに巻きます。やったことない人がぶっつけ本番では絶対にできません。安いカラーフィルムを1本捨てて、明るい場所で何度も何度も練習してください。慣れてきたら目を閉じて練習してください。それで失敗しなくなったら、実際にダークバッグに入れて練習してください。本番では「なんかおかしくなった」からと言って、フィルムを取り出して調べることはできません。

パトローネからフィルムピッカーでフィルムを少し出し、先端をハサミでカットします。その状態で

  • 蓋の開いた現像タンク
  • リール2個
  • フィルム2本
  • ハサミ

をダークバッグの中に入れて、二重になっているジッパーを閉じます。手を入れる部分が二カ所あるので、ここから手を入れます。

指先の感覚を頼りに、フィルムをパトローネから引き出し、リールの中央部の金具に引っかけます。そのままフィルムを引き出してパトローネを押し回しして、フィルムを巻き付けてください。リールを回してフィルムを引き出すと、巻かれているレールから脱線してフィルム同士が密着してしまい、現像に失敗します。
巻き終わったらパトローネからフィルムをハサミで切り離します。このとき、あまりパトローネの近くでハサミを入れるとベロの部分の繊毛を切ってしまって、フィルムに繊維が付着してしまうので注意です。

リールを現像タンクに挿入します。2本用の現像タンクであれば、リールは2個入ります。蓋をしっかり閉めたことを確認したら、ダークバッグの中から取り出します。

 

2.薬液を作る

リール2本用の現像タンクは490ml未満なので、各薬剤は490ml〜を作ります。

2−1.現像液を作る

秤の上に四角い紙をのせて、D76を27g測ります。これを計量カップに濯いで水を加えて、490mlにします。ダマにならないようにしつこく撹拌棒で撹拌します。この時点で原液50%の希釈液となります。

2−2.停止液

15mlを計量カップに入れて、水を加えて490mlにします。元が液体なので、軽く撹拌すれば混ざります。

2−3.定着液

コダックフィクサーを現像液と同じ要領で90g計量し、計量カップに入れて水を注ぎ、500mlにして、よく撹拌します。定着液は再利用する度に目減りするのでちょっと多めです。

2−4.水洗促進剤

2リットルのペットボトルに水を満たし、促進剤の粉末を入れて、キャップを閉めてガシャガシャ振ります。

 

3.温度を管理する

洗面器3つに水を張り、1つめの洗面器をシンクに置き、2つめに現像液、3つめに停止液と定着液を浸します。水没したりひっくり返らないように気をつけてください。

これら3つの洗面器の水を、夏場は凍ったペットボトルで冷やし、冬場はお湯を加えて20℃前後に保ちます。カラーネガフィルムの現像ではこの温度管理が非常にシビアですが、モノクロフィルムの場合は結構アバウトです。±2度くらいの誤差なら許容範囲です。

 

4.現像する

キッチンタイマーを用意してください。濡れてもいいやつです。スマホはお勧めできません。

タンクから現像液が溢れる可能性があるので、もし用意できるならキッチン用ゴム手袋か、使い捨てのラテックス手袋を着けてください。シンクにおいた洗面器はインターバル時に現像タンクをつけて20℃を保つために使います。温度計は洗面器を横断しながらチェックするようにしてください。

4−1.現像する

タイマーを10分にセットしてスタートさせます。現像液のメスカップから現像タンクに素早く移し、キャップを閉めます。気泡を予防するために、現像タンクを数回手か堅いもので叩きます。10回手でたたくと気泡はかなり抜けます。

現像タンクを両手で持って、4回の倒立撹拌を行います。これはタンクを逆さにして、ゴボゴボとタンク内部で気泡が移動する音を聴き、静かになったら再びもとの向きに戻します。この一往復で1回です。間違ってもガシャガシャ振ってはいけません。4回の倒立撹拌はだいたい10秒で終わります。最後に気泡予防に現像タンクを数回叩き、シンクの洗面器に着けます。現像タンクは背が低いので、水没に注意してください。これを現像時間いっぱいまで1分ごとに繰り返します。

開始 終了 作業
00:00 00:10 現像液を入れてキャップを閉める。
00:10 00:20 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
00:20 01:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
01:00 01:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
01:10 02:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
02:00 02:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
02:10 03:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
03:00 03:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
03:10 04:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
04:00 04:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
04:10 05:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
05:00 05:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
05:10 06:00 現像液に浸してインターバル。折り返し地点です、踊って待ちます。
06:00 06:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
06:10 07:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
07:00 07:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
07:10 08:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
08:00 08:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
08:10 09:00 現像液に浸してインターバル。踊って待ちます。
09:00 09:10 倒立撹拌4回。5回叩いて気泡を抜く。
09:10 10:00 現像液に浸してインターバル。ラストスパートです、踊って待ちます。
10:00 10:10 現像液を計量カップに戻します。戻した現像液は後で廃液用ペットボトルに入れてください。

4−2.反応を停止させる

現像液を捨てても、残った現像液によって反応は進みます。そこで酸っぱい酸っぱい停止液を注ぎます。これはアバウトでいいので、30秒ほど倒立撹拌を続けてください。全体的に混ざれば反応は止まります。停止液は廃液タンクに入れる必要はありませんので、水を流しながら捨ててください。

これが完了すればひとまず落ち着けます。

4−3.定着させる

再びタイマーを10分にセットしてください。

定着液をタンクに注ぎ、最初の30秒間は連続して倒立撹拌を行い、その後は上記現像液と同じ手順とインターバルで倒立撹拌を行います。完了したら、定着液はメスカップに戻してください。これは保存して使い回します。

 

5.水洗いする

もうタンクの蓋は開けて良いですが、水洗いする時の手続き上、閉めたまま行った方が効率がいいです。感動はお預けです。

キャップを開けて水用メスカップから水を注ぎ、10回倒立撹拌を行い、水を捨てます。これを、排出する水の色が薄くなるまで繰り返します。よく水を切ったら蓋を開けちゃってください。ペットボトルに作っておいた青い水洗促進剤を入れて1分以上放置します。その間に道具を片付けてください。1分後、水洗促進剤は捨てます。

再びタイマーを10分にセットしてください。

再び現像タンクの蓋をしめて、キャップを開けて水を注ぎ、キャップを閉めて倒立撹拌を繰り返します。30秒ほど撹拌したら、水を排出します。色つきの水が排出されるのを確認してください。これを10分間繰り返します。体感では7分30秒でほぼ洗浄は完了していますが、適当に洗浄すると汚れが酷くなるので必ず10分続けてください。水洗促進剤を使わない場合、この作業を1時間以上続けてください。

水洗いが終わったら、タンクの蓋を開けてリールからフィルムを引き出します。ちゃんと現像できているかどうか最初に確認できる緊張の瞬間です。光にかざしてネガの映像が透けて見えればほぼ成功です。たくさん現像していても未だにこの瞬間は感動します。
この状態でフィルムの両端を持ち、ぴっぴっと振って水滴をある程度飛ばしておきます。

 

6.乾燥する

洗濯物を干すやつにフィルムの先端を挟んで干します。埃がつくと落ちない汚れになるので、お風呂場や誰も入らない部屋などの密閉空間で乾燥させてください。

フォトスポンジに冷たい水を含ませてフィルムを軽く摘み、下方へゆっくり滑らせます。強く摘んだり、勢いよく滑らせると現像面が傷ついたり剥がれたりします。お湯は絶対使わないでください。

最後にフィルムの一番下に洗濯ばさみを挟んで錘にしておきます。なにもつけないと、くるんと丸まってフィルム自体がくっついて損傷することがあります。

 

7.完成です

フィルムは一晩、あるいは丸一日放置すれば乾燥します。

乾燥し終わったフィルムは6枚ごとにカットしてフィルムシートにしまっておきます。本当はこういった密閉性の高いフィルムシートではなく、大昔の紙でできたフィルムシートの方が保存に向いています。

 

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