皆様お待ちかね、フィルム終焉のこの時代にモノクロフィルムを自家現像しようという極めて酔狂な方に向けておくる、個人的な現像レシピです。
ネット上には自家現像について書かれた記事はたくさんありますが、選択肢があまりに多く、また書かれた時期も少し古いため、道具を揃えることすらままなりません。すごく難しく感じます。
自家現像は道具を揃えることと、ダークバッグの中でフィルムをリールに巻き付けるところ以外は、そんなに難しくありません。手順を間違えず、温度管理さえ注意すれば誰にでもできます。ただし、途轍もなく面倒で時間がかかり、フィルムを干すためのスペースが必要です。現像は大抵水を大量に使えるキッチンなどで行いますが、酢酸を流すのでめちゃくちゃ臭いです。水で薄めずに流していると水道局の人に怒られるので気をつけてください。
ここで説明するレシピは私が現像するときに使用しているもので、一般的ではないかも知れません。その代わり、他の選択肢は与えませんから、迷いもないと思います。生産終了品などにぶち当たったときだけ、代替品を探してください。
必要な道具を揃える
モノクロフィルムの現像に必要な薬剤は、現像液、停止液、定着液、水洗促進剤の4種です。また、現像を行うために必要な道具は、現像タンクとリール2個、ダークバッグ、フィルムピッカー、500ml以上のメスカップを4つ、撹拌棒、温度計1本、秤(キッチン用で十分)、洗面器2つ、フィルムの水滴を取るためのフォトスポンジ、2リットルのペットボトル容器が3本〜、定着液保存用の斜光ボトルが1本、漏斗が2個、水量を測るメスシリンダーか計量カップが1個(料理用でOK)です。
これらの道具は一カ所のお店で一度に入手することは難しいので、個別に探して購入してください。全部揃えても、15,000円前後です。
薬剤
現像液
KodakのD76現像液を購入してください。粉末状で、現像する際に水に溶かして使用します。写真のように一度開けたら洗濯ばさみで挟んで保管しています。本当はもっと密閉性の高い遮光容器に入れた方が良いと思いますが…。
停止液
酢酸です。SUPER FUJIFIX-Lを購入してください。めちゃくちゃ量があるので、多分一生かかっても使い切れません。液体状で、現像する際は大量の水で薄めます。臭いです。
定着液
コダック フィクサーという定着液を購入してください。これも粉末状で現像する際に水に溶かして使用します。粉末状の薬剤の方が長持ちしますし、コスト的にもメリットが大きいです。定着液は再利用するのでなかなか減りません。
水洗促進剤
富士QW2リットル用を購入してください。2リットルの水に溶かして使用します。ペットボトルに入れて保管できますが、青くて美味しそうな色合いになるので、子供の手の届かないところにおいてください。
道具類
現像タンクとリール2個
LPLの2本用現像タンクと、リールを2個購入してください。金属のものがお勧めです。
ダークバッグ
エツミのダークバッグを購入します。ここに手を突っ込んでフィルムをリールに巻き、現像タンクにセットします。
フォトスポンジ
KINGのフォトスポンジを購入します。洗浄したフィルムから水滴を取るために使用します。
温度計
モノクロフィルムの現像においては、薬剤の温度を20度にキープする必要があります。洗面器は3つ使用しますが、温度計は一本あれば十分です。
撹拌棒
代用できるものがあれば良いのですが、冬場の粉末現像液を溶かす作業は非常に大変です。専用の撹拌棒があったほうが捗ります。
漏斗
使用済み定着液や現像液を保存ボトルや廃液用のペットボトルに移し替えるのに使用します。無いと結構困ります。漏斗は片方に「定着液」と書いて、専用にしてください。
フィルムピッカー
巻き戻してパトローネ内部に入り込んだフィルムを取り出す器具です。どうして取り出せるのか未だに原理が解明できません。巻き戻したフィルムは大体パトローネ内部まで巻き込んでしまいますから、この道具は必須です。ダークバッグの中でカシメ外しを使ってパトローネを分解するのは難しいのでお勧めできません。
メスカップと計量カップ
500ml以上のガラス製計量カップを1つと、大きめのメスカップを4つ購入してください。メスカップには、マジックで「1.現像液」、「2.停止液」、「3.定着液」と書いてください。何も書いてないメスカップは水専用です。書かれた液体以外の用途には絶対に使用しないでください。
秤
キッチンでお菓子作りをするのに使う平たい秤があればそれで十分です。無ければなんか買ってください。薬剤の計量に使用します。
洗面器
薬剤の入った計量カップを2個ずつ、更に現像タンクも入れるので、合計で3つあれば足ります。専用のバットなども売られていますが、結構薄いので洗面器の方が便利です。ちゃんと洗えばお風呂場の洗面器で代用できます。
遮光ボトル
定着液を保管するのに使用します。1本あれば十分です。
2リットルペットボトル
なんか飲んだものを洗って流用してください。水洗促進剤を溶かして保管するのに使います。また、廃液を貯めるのにも使います。
道具を管理する
上記の道具は直射日光のあたらない涼しい場所で保管してください。スペースがあるならメタルラックなどを購入して、そこに置くのがお勧めです。メタルラックは風通しがよく、床に新聞紙でも敷いておけば、洗った道具を効率よく乾かせます。
定着液は1ヶ月程度しか保管しないでください。期限を過ぎたら、廃液用のペットボトルに入れてください。現像液は再利用できないのですぐに廃液用のペットボトルに入れてしまいます。停止液は濃いお酢ですから、希釈して捨ててください。
廃液を業者に持って行く
業者に廃液を持ち込む場合は、お近くの処理業者を検索して、ご自身で持ち込んでください。
廃液処理は法律で定められていますが、環境負荷についてあなたは心を悩ます必要はありません。是非持ち込む際はLS600hLのようなリッター5kmも走らないような高級車で乗り付け、せいぜい2リットル程度のペットボトルの廃液処理をお願いし、アクセル全開でご帰宅ください。業者は2リットルの廃液を分解処理するのにたくさんの電気と人件費を使ってくれるでしょう。それが現代のエコなのですから。