アナログカメラの優れた機能

ここではレンズや本体に関して、アナログカメラの優れた機能面について取り上げたいと思います。

デジタルカメラはあらゆる機能の自動化によって、撮る人にカメラの複雑な操作や光学的な理論を要求しないようになっています。それは、素早く大量に撮影して、すぐさま大量に加工し、大量に消費するというベクトルを持っているからです。巨大なフルサイズ一眼をぶらさげていながら、親指フォーカスも使えずシャッターチャンスを逃す人はデジタルに全く向いていません。

マニュアルカメラではそういったシビアなシャッターチャンスを要求される撮影において、デジタルに勝る機能性は皆無です。50mmレンズをつけてのんびり街を歩き、残しておきたい風景を一枚ずつ確かめながらゆっくり撮影するスローカメラです。

太宰府

 

アナログ調整ができる

中古カメラのシャッター速度ダイヤルや絞りリングは一段ずつの区切りになっていて、デジタルカメラのような細かい設定ができないように見えますが実はそんなことはありません。

シャッター速度

シャッター速度1/125と1/60の間にダイヤルを合わせると、その間のシャッター速度になります。これは結構アバウトですから、正確に1/3段ずつ調整するのは難しいです。

嘘だろという方は1/2と1/4の間でシャッターを切ってみてください。1/2ほど長くなく、
1/4ほど短くないシャッターが切られることを体感できます。

機械式カメラは高速シャッターと低速シャッターは機構が異なるため、その切り替え部分である1/60と1/30の間ではアナログ調整はできません。

絞り値

マニュアルレンズは絞りリングを回すと、それに応じて絞り羽根が動きます。この動きをレンズを覗きながらみているとよくわかりますが、滑らかに絞られたり開いたりします。ですから、エルマーの沈胴式レンズをお使いだとしても、細かい絞り設定が可能になります。

ただし、レンズに関しては比較的古いものでも1/3段ずつ絞り調節できるリングが多いので、それほど活用することはないかもしれません。

デジタルカメラの絞りは「シャッターを切る瞬間」しか動きません。通常は全開になっています。絞った状態でどのように見えるか確認する機能は、かなり高級なフルサイズ機にしか備わっていません。

 

サイズが小さい

35mmフィルムと同じサイズのセンサーを持ったデジタルカメラは「フルサイズ」と呼ばれ、本体はずんぐりと巨大で、レンズも重くて大きいです。首に提げて歩けばすぐに疲れてしまいますし、ガチな人にみられます。NikonのD4に24-70を挿せば、本人は観光地でスナップのつもりでも、周りからは事件現場で証拠品を撮影する鑑識班か、じゃらんのキャンペーンLP素材を撮影するプロカメラマンだと思われます。是非あの馬鹿みたいなツインフラッシュブラケットでも実装してやかましい連続シャッター音を響かせてください。誰も近寄ってきません。

同じフルサイズの一眼レフであっても、フィルムカメラは比較的小さいです。アルミダイキャスト剥き出しですこし重く感じるかも知れませんが、カメラの重量は手振れを防止する効果をもたらします。わかりやすい例だと、狙撃銃は突撃銃の倍くらい重いです。

PENTAX SPと同じサイズのフルサイズデジカメはLeicaくらいです。見た目は小さいですが、お値段が横綱級です。

M3

 

バッテリーやSDカードがいらない

デジタル一眼はバッテリーの持ちが良くて、換えのバッテリーを持たなくても大丈夫なイメージがありますが、実はそうでもないです。旅行に出かけて3日ほど撮影し続ける前提だと、初日で16GBのSDカードが満杯になり、二日目の午後にバッテリーメーターが一個減ります。一個減ってから空になるまではめちゃくちゃ早いです。D800のRAW画像は一枚40MBですから、16GBのSDカードでは400枚程度しか保存できません。

他方、ミラーレスやコンパクトデジカメはEVFなどに映像を表示しますから、バッテリーの減りが早いです。SigmaのDP merillなどは酷い話で、平均して70枚しか撮れないという報告があります(価格コム)。

マニュアルカメラではバッテリーの心配はいりません。フィルム枚数は気になるかも知れませんが、未だに観光地ではアチコチでフィルムが売られています。先日鎌倉を訪れたときは、駅前のDPEで普通にリバーサルフィルムが売られていました。そもそもフィルムカメラで撮影にいくのに、フィルムの準備を忘れる人はいないでしょう。SDカードだと、それなりの品質のものを使わないと、せっかく撮影した写真が全部消えるという面白くない状況に陥ります。

フィルム

 

理論に基づいた設計

フィルムカメラは写真理論に準じた設計になっていますから、絞りやシャッター速度を素早く変更し、構えることなくフォーカスを大雑把に合わせ、素早くシャッターをきることができます。それ以外に撮影に関わる無駄なインターフェースがありません。

デジタルカメラはフィルムカメラのようなマニュアル撮影を行う設計になっていません。マニュアルモードはありますが、信じられないくらい使いにくいです。CanonとNikonでは操作系が全く異なります。安いカメラだとファインダーが暗く小さくマニュアルフォーカスも満足にできません。しばらく操作しないでいるとスリープ状態になり、絞りダイヤルなどが操作を受け付けなくなります。

こういったマニュアルカメラのベーシックな機能性は慣れるまですこし時間がかかりますが、慣れれば手足の延長のようになります。人間工学に基づいた現代のカメラがいつまで経っても手の中で異物のままでいるのに対し、ゴツゴツした無骨なデザインのフィルムカメラは使い始めると手になじみ、「俺はこんな高級ビンテージカメラを使っているんだーどやー!」という優越感は消え、見たものを記録するための人体機能の一部と化します。
私は普段Leica M3を使用していますが、撮影時にM3を使っているんだ!という所有感は全くありません。これは驚くべき感覚です。

 

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