絞りとボケ

絞りをコントロールすることで、全体にフォーカスが合ったパンフォーカスの写真、被写体だけに合焦したボケのある写真が撮影できます。初心者の多くがこのボケ味のある写真に惹かれて、大きめのカメラを欲しがります。

デジタルカメラの場合、センサーのサイズが大きいほどボケ味が強くなりますが、センサーのサイズが大きくなるほど価格も高くなってしまいます。一般的にフルサイズ機と呼ばれるカメラはレンズも含めると30万前後になります。

他方、中古で一万円を切る価格のフィルムカメラですが、35mmフィルムはフルサイズ機と同じ大きさです。ボケ味もフルサイズ機と同等です。こう書くと誤解を生みそうですが、「フルサイズ機がフィルムカメラと同等」と表現するのが正しいです。35mm full frameと比較してフルサイズ、ということです。

絞りとは

フィルムカメラのレンズには「絞り」という機能があります。
これは人間の眼の瞳孔に似ていて、入ってくる光の量を調整することができます。人間の眼と同様、明るいところでは小さく絞り、暗いところでは大きく開き、フィルムに適切な露出を与えることができます。

この絞りを小さく絞ると、写真全体にフォーカスが合うパンフォーカスとなり、反対に大きく開くと被写体だけにフォーカスが合い、前後がボケた写真になります。
絞りは数値で表現され、F値と呼ばれます。通常、50mmの単焦点レンズには、1.4、2.8、4.0、5.6、8.0のように絞り値が刻まれ、小さい値ほど絞りが開かれ、大きい値ほど絞りが小さくなります。実際に絞りリングを回すと、レンズ内で絞り羽根が動くのが確認できます。

フィルムカメラはシャッタースピードで露出をコントロールできますから、デジタルカメラほどではないにせよ、狙った絞り値で撮影することも期待できます。しかしながら、本来絞りは露出のために作られた仕組みであり、ボケ味や表現をコントロールするための機構ではありませんから、適切な露出を犠牲にしてまで開放撮影や絞り撮影を強行すると、気取った写真になってしまいます。

大雑把な原理

ほんとうに大雑把に説明すると、

  • 絞りを開放するほどボケる
  • 被写体が近いほどボケる
  • 焦点距離が長いほどボケる
  • フィルムサイズが大きほどボケる

ということになり、前後がボケた中でフォーカスの合う距離(厚み)のことを被写界深度といいます。この被写界深度が浅いほど、前後がボケやすいということになります。

上記は開放撮影の大雑把なイメージです。レンズの大部分を光を収集するために使用します。周囲の光も取り込むために、フォーカスの合う範囲が狭くなります。

上記が絞った場合のイメージです。絞ることでまっすぐの光しか入らなくなり、焦点の合う範囲が広くなるのがわかると思います。相当大雑把ですが、大体のイメージはつかめると思います。

使い所

絞りを絞って全体にフォーカスが合うことを「パンフォーカス」と呼びます。前後がボケた写真と、このパンフォーカスの写真は、それぞれ使い所があると思いますが、これが正解というものはありません。

パンフォーカス撮影

個人的に、しっかり絞って撮影するときは、全体を撮りたい時、つまり風景写真などのケースです。風景を撮影するときに、絞りを開放して撮影すると、ボヤっとした写真になってしまうことがあります。これは十七世紀の粗悪なレンズで得られる映像に似ています。

絞り値をF8以上にすると、一般的なフィルムでは非常に精細な写真を撮影できます。過度に絞ると露出不足になったり、色が薄くなることがあります。デジタルに比べると、輪郭がソフトで光の発色が明瞭です。

開放撮影

特定の被写体を撮影したいときに、絞りを開放した撮影を行います。
そうすることで、撮りたい被写体だけに焦点が合い、それ以外の余計なものを綺麗にぼかすことができます。写真は絵とは反対に引き算ですから、画面内に余計なものはなるべく入れないほうが良いとされます。

絞りを開放して撮影するとき、被写界深度に気をつける必要があります。
例えば料理を撮影したいときに、料理に近づいてF1.4くらいで撮影すると、料理の一部にだけフォーカスが合い、前後がボケてしまって、一体何の料理かわからなくなってしまうことがあります。

その距離と被写体の大きさに応じて、適切な絞り値を選択するようにすべきです。一眼レフであれば、ファインダーで覗いたときにある程度ボケのイメージもつかめますが、レンジファインダーではわかりません。直感と経験が必要です。

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