マニュアルカメラで撮影するとき、露出を計算して、シャッター速度と絞り値を決める知識が必要になります。ネガフィルムは最適な露出範囲が広いので、デジカメに比べて大雑把で構わないと思います。
露出とはなにか
露出はEV(Exposure Value)とも言い換えられ、絞り値(F値)とシャッター速度の組み合わせで決まる「シャッターを切った時にフィルムに照射される光の量と長さ」を調整するために用いられる値です。カメラ本体のどこを見ても「露出」とか「EV」という単語はないのでデジカメ世代は知らないことが多いですが、マニュアルカメラでは絶対に避けては通れない道なので、この際覚えてください。
EVの基準を覚えよう
大雑把なEVの条件は以下のように決めています。これはISO100のフィルムを使った場合の基準値になります。
EV | 撮影の条件 |
---|---|
7 | 照明のある室内。 |
10 | 自然光の入り込む室内。冬の曇り空の日陰。 |
12 | 曇った日の日陰。 |
14 | 快晴の野外。 |
16 | 快晴時の海、山、雪景色。 |
この光の条件別のEVを体感で覚えるには、スマホアプリで露出計をインストールし、色々な場所のEVを確認することです。ある程度体感で把握できるようになれば、撮影時に露出計は要りません。
ではこのEVはどのように使うのでしょうか?
絞りとシャッター速度でEVを計算する
絞り値とシャッター速度はAvとTvという値に変換できます。このAv+TvがEvとなります。
絞り値 | Av |
---|---|
1.0 | 0 |
1.4 | 1 |
2.0 | 2 |
2.8 | 3 |
4.0 | 4 |
5.6 | 5 |
8.0 | 6 |
11 | 7 |
16 | 8 |
22 | 9 |
シャッター速度(秒) | Tv |
---|---|
1 | 0 |
1/2 | 1 |
1/4 | 2 |
1/8 | 3 |
1/15 | 4 |
1/30 | 5 |
1/60 | 6 |
1/125 | 7 |
1/250 | 8 |
1/500 | 9 |
1/1000 | 10 |
上記の変換表を総て覚える必要はありません。絞り値であればF2.8=6、シャッター速度であれば1/60=6と覚えておけば、古いカメラのシャッター速度ダイヤルや絞りリングは上記のように1段ごとに区切られているので、そこから±1ずつ数えていけば良いだけです。
快晴の屋外で撮影するとき、EVは14となります。F/2.8で撮影するとき、Avの値は6ですから、
Ev14(快晴) – Av6(F/2.8) = Tv8(1/250)
とシャッター速度を計算することができます。簡単ですね!
フィルムのISO感度
フィルムにはISO感度という値が定められています。上記の露出はISO100のフィルムを前提とした場合の値で、ISO感度が1段あがるごとに、Evは+1します。ISO感度の数値は倍になるごとに1段と見なされます。すなわち、ISO100の次は200、400、800、1600、3200…となっています。
すなわち、ISO400のフィルムで撮影する場合、快晴のEvは14+2で16となります。この値はセンパチ(1/1000でF/8.0)と呼ばれますが、普段ISO100フィルムを使う方は間違って覚えないようにしてください。
フィルムとして実用的なのはISO800くらいまでで、400を超えると粒状感が目立ってきます。その粒状感が好きで高感度フィルムを多用する方もいます。またフィルムメーカーや製品によってその粒状感も大きく異なります。体感ではKodakよりFujifilmの方が映画的な粒状感が目立ってフィルムらしく、好みです。
ラティテュード
適正露出の許容範囲、という意味でラティテュードという言葉を使います。これは、適正なEvが14だった場合に、設定をどれくらいずらせるか、という意味です。露出を理解していないと意味がわからないと思います。
ネガフィルムのラティテュード
一般的にネガフィルムはラティテュードが広いと言われていますが、実際にプリントが可能な範囲は
−1〜+4
くらいだそうです。明るい方に強いんですね。この範囲を外れたとしても一概に失敗とは言えません。暗すぎた場合でもざらざらした輪郭が浮かび上がったり、明るすぎた場合でも完全に白飛びすることが少なく、面白い写真に仕上がることがあります。
ポジフィルムのラティテュード
ポジフィルムのラティテュードは非常に狭いので、常に露出計で最適な設定を選ぶべきです。実際には±1/3くらいの許容範囲で、それを外れるとあの鮮やかさは期待できません。
デジカメのラティテュード(オマケ)
デジカメのラティテュードはポジフィルム同様非常に狭いと言われていますが、それはカメラ内部で現像を行う「画質がFINE等でjpegを出力する場合」で、RAW画像を記録する場合はネガ並のラティテュードがあります。
まともな現像ソフトには、シャドウとハイライトという設定があります。シャドウは「暗い部分だけを明るくする機能」で、ハイライトは「明るい部分だけを暗くする機能」です。前者は黒潰れした部分に、後者は白飛びした部分に、本来写っていたはずのものを蘇らせることができます。
フィルムにこういった加工機能はありません。写っていないものは蘇らないのです。