今から始めるフィルムカメラ

長瀞・PROVIA

男性が始めたい趣味ランキングでも第1位に選ばれた写真・カメラ。
行きつけの美容院の美容師さんも「カメラ始めたいっすよ〜」と言っていました。生活を豊かにしたり、気分転換したりもそうですが、趣味として様々な層の人に一定の評価を受ける外面の良さや、手軽に嗜む程度から真剣に打ち込むこともできるスタイルの幅広さも人気のひとつです。

男性に人気の趣味1位は「カメラ・写真」でした! カメラを趣味にすると、いろいろなところへ行きたくなりますよね~。カメラ片手に旅先を歩いていたらステキな出会いがあるかも!?

まぁだいたいそんな感じですよね、趣味なんてそれほど高尚なものではありません。むしろ下心のないストイックな趣味が赦されるのは10代までの子供時代と、40過ぎのオッサンオバサンだけです。

スマホの時代になぜフィルムカメラなの?

写真は若いうちに始めるべきです。あなたが30代後半だとしたら、カメラを始めるタイムリミットぎりぎりですから、今すぐ定期預金を解約してカメラを買いに走るべきです。
なぜなら、個人的に撮影された写真の大きな価値のひとつに、経過時間、があります。撮影されてから年月の経った写真ほど、個人的にも、鑑賞の対象としても高い価値を獲得します。昨日の写真より、去年の写真の方が懐かしいものです。20代のあなたが70代になって孫が遊びに来たとき、50年前の写真をみせられる文化的豊かさについて想像してください。そのとき、孫はあまり興味をもたないかもしれませんが、更に二十年後、あなたのお墓に「じいちゃんのContaxオーバーホールしたよ」と成長した孫が報告してくれるかもしれません。

江ノ島

全世界で二十億人がスマホを持ち、その半数以上が写真アプリで写真を取り、二千五百億枚の画像がネットにアップロードされる時代に、なぜわざわざ廃れゆくフィルムカメラをあえて勧めるのかといえば、それがある種のサブカル的な特別感を持ち始めたと言えばよいでしょうか。

2000年をピークに、十年でフィルムの需要は一割以下に落ち込んでいます。その斜陽の十年間で写真を趣味にする人のほとんどがデジカメに移行し、もはやフィルムを振り返ることはありません。しかし、そうしてフィルム写真が減り、デジタル画像が爆発的に増えると、相対的にフィルム写真が希少価値を高めたのです。

フィルムが廃れゆく十年間に少年少女時代を過ごしたデジタルネイティブ世代は、フィルムをよくしらないかもしれません。インスタグラムで撮影したエミュレート画像に無意識に郷愁を覚え、この気持はなんだろう?とふわふわしてるなら、LOMOで撮影されたビネットの強いド発色写真やクロス現像写真、タングステンフィルムの野外写真と出会い、デジカメとは全く違う想い出の色を発見すべきです。
それは過去のダゲレオタイプのように複雑な儀式を要求するロストテクノロジーではなく、中古のフィルムカメラで容易に撮影でき、近所のDPEで1時間ほどで現像してもらえる手軽なものです。

実のところ、デジタルでフィルムをエミュレートすることは不可能ではありません。このサイトにもフィルムをエミュレートする方法について記事があります。しかし、それはデジタル撮影された画像を加工した精巧な贋作です。

「銀塩写真でしか表現できない」ものはなにか、ということは、実際のところプロの写真家たちにもしっかり自覚されているわけではない。フィルムを使わなければならない、説明可能な理由や動機を持っている日本人の写真家はほとんどいないのではないだろうか。

東京オルタナ写真部・フィルムを使う最後の理由(1)

初めて触れたカメラがデジタルで、カメラはデジタルしか知らなかった私が突然フィルムカメラを始めて、デジタルではなく銀塩写真でなければならない!と感じた理由について説明することは難しいのですが、いまの時点で言えることは3つ。

フィルムは写真、デジタルは素材

写真はフィルムカメラで撮影されたもので、それそのものが目的であり結果であり、完結しています。

他方、デジタルで撮られたRAWはそれそのものでは画像にすらなり得ませんから、内部の予測処理でどうにかこうにかRGB画像として出力します。その記録情報は加工を前提とした14bitであり(通常の画像は8bit)そこから色を変え明るさを変え傾きを補正しゆがみを補正し色収差を縮めて人物を切り抜いて企業ウェブサイトのタイトル画像に使われる素材として極めて高い機能性を持った元データです。写真として完結するという方向性をあまり持っていません。

フィルムは実、デジタルは虚

フィルムで撮影された写真は、まずフィルムというものが残ります。デジカメではRAW画像です。前者は手に触れ、光にかざすことが出来ますが、後者はその存在を確認するには、お使いのデジカメのRAWサポートがmacにインストールされている必要があります。

実際に触れることの出来るフィルムをファイルしていくと、自分自身が撮りためたフィルムを現実の重さとして確かめることが出来ます。私のフィルムファイルには現在50本分くらいのフィルムが収められていますが、結構重いです。枚数にすると1,800枚。デジタルで撮った写真はこれを遥かに超える枚数だと思いますが、数えたこともありませんし、ほとんど振り返ることもありません。なぜなら、この数十倍のデジタル写真を撮影するために費やしたコストは0円だからです。機材にはお金がかかっていますが、ランニングコストが実質0円なのがデジタルの強みでもあり、趣味としての価値観が欠落した部分でもあります。

銀塩写真はデジタルでは撮れない

デジタルでは銀塩写真は撮影できません。
もともとカメラを買った直後に撮りたかった写真が、東野翠れんさんが撮っていたノスタルジックなカラーネガや、ロシア人カメラマンがLOMOで撮ったクロス現像の写真で、CaptureOneProでゴリゴリ加工して銀塩に近づける追い込みに没頭したこともありましたが、結論から言うとデジタルカメラで銀塩写真を再現することには意義がありません

なぜなら、デジタルカメラはより高精細で加工耐性に優れた素材を生み出すというクリエイティブな未来を指向し、フィルムカメラとは全く違う方向を向いています。もっと加工技術を駆使して頑張ればできるかもしれませんが、それはデジタル現像という14bit画像加工技術の成果を追い求めることで、やればやるほど偽物になります。これ以上の努力を積み重ねるくらいなら、デジタルを捨て、フィルムで撮っちゃった方が早いのです。

逆にデジカメしか使わない人に言いたいが、ボタン一つで消去できるデジタル画像を「作品」と呼ぶには軽すぎます。

アナログカメラを使われている方に質問です。

鎌倉

フィルムを使う最後のチャンス

デジタルカメラの需要が増え、フィルムは次々に販売終了を迎えていきます。2015年初頭にはKodakフィルムが大幅に値上げされました。その際、モノクロフィルムの価格も大幅に値上がりし、フィルムユーザがモノクロを自家現像するメリットが大きく失われつつあります。ほとんど今や新参者が流入する間口は無いと言ってもいいでしょう。

それでも敢えてフィルムを使うことを推奨するのは、百年以上の歴史がある銀塩写真を撮影する最後のチャンスだからです。もう先がないものを趣味にすることほど贅沢なことはありません。あなたが購入したカメラはいつかインテリアになりますが、撮影したフィルム写真は日に日に価値が上がるでしょう。その日が来るまでに、とにかくたくさんフィルムで写真を撮るべきです。もしデジタルカメラも所有していれば、二台持って出かけてください。そして両方のカメラで写真を撮ってください。20年後、フィルムの写真は手元に残り、大切な思い出の品となりますが、デジタル写真画像は消してしまったか、アップロードしたクラウドストレージのアカウントを失っているはずです。

 

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